旅の途中−ブログ篇−
                  「根本豊の Beyond The Radio」
郡山美術館の新聞完成
2008年 08月 08日 (金) 21:47 | 編集
情宣用の新聞が届きました。
私が書いた記事を、転載許可ということで、まんま転載します。
なお、FMポコの生出演は、
8月13日(水)は、10分しか枠がとれないので、
14日(木)の13時から15分枠での出演となりました。
いやぁ、話したいことが多すぎて・・。
番組名は「マイタウン ポコランド」です。
しっちゃかめっちゃか爆裂トーク!聞いて下さい。
まとまるかなぁ。

寺山修司と出会った頃

「へー劇団作ってたんですか?」
暗闇の向こうからTVで聞き覚えのある寺山修司の生声が私に問いかける。顔は見えない。

一九七五年一月、入団試験会場の渋谷天井桟敷館アトリエ、蝋燭を灯しただけの薄暗い地下室。
無頼を纏った黒マント姿の私。

当時私は大阪で劇団を主宰していたのだが、学生運動と宴会に熱心な集団で、
語るべき劇団史など持ち合わせてはいなかった。
数少ない上演レパートリーを頭の中で整理して身構えていると、ボソッと一言
「何でネクタイ締めてるの?」。
履歴書に貼ったリクルート用写真のことだった。
私は肩すかしを喰わされ、そして一ヶ月後合格通知が届いた。

答えのない「質問」は無限にあるのだ。
私はその日から「質問」探しの旅に出ることになった。

 私が大阪でしょうもない芝居を作っていた頃、劇団日本維新派(現・維新派)の旗揚げ公演にひょんな事から立ち会う機会があった。
筋とは関係なく役者同士がマジで喧嘩を始める、花道に並んだ数人が着物の股を捌きバケツに放尿し、それをグルグル回したかと思うと一斉に頭から尿を被り台詞を叫ぶ
「命に代えたる男じゃもの!」。
タイトルである。ストーリーはハチャメチャだったが度肝を抜かれた。

天王寺の野音に赤テントが立った。状況劇場「唐版・風の又三郎」だった。
客入れ前の人集りの中、門柱の上で二人の役者が堂々とメイクをし、
劇中では大久保鷹が生きた鶏を絞め殺していた。
なぜかカッコよかった。

そして私は一路アングラを目指し、大久保鷹とキャラが被らない天井桟敷を受けることにしたのだった。

入団後、文芸演出部兼俳優として上演を間近に控えた三〇時間連続市街劇「ノック」の練習に突入。

尾行訓練、慈善を装った街頭募金、見知らぬ家に団員を一晩預ける偽里子訓練等々、この期間はまさにカルチャーショックの連続だった。

そして本番では全身包帯の男が団地のドアをノックし妊婦が流産しかかったとか、銭湯で俳優が台詞を叫びだし一一〇番通報があったとかで警察の介入も度々。

観客の見えないところでも劇は進行した。
書簡演劇では一ヶ月前からターゲットの会社員に、尾行した結果を(出社時刻・昼食メニュー・退社後の行動等子細に)毎日送り続け、
本番前日は、行動パターンから読み取った翌日の予定行動を時系列通りに事細かく書き付け、
前日の内に届くよう送りつけた。
当日その人は急に会社を休み昼から酒を飲んで、あげく自転車泥棒し捕まった。

この演劇は当時の社会面を賑わす事件だった。
開演から二九時間後、突然寺山さんがマスコミを公園に集め公演中止と官憲に対する抗議集会の開催を宣言。
私にとっては寝耳に水だったが、度重なる官憲介入に業を煮やした寺山さんの素早い行動だった。
ただラストまであと一時間に迫った我々現場の人間としては、最後までやり抜こうという意見が大勢を占め、最後のシーン「壁の消失」まで突っ走り三〇時間連続市街劇を遂行した。

数日後の劇団総会で寺山さんが「私の決断が聞き入れられなかったので、私は劇団を辞めさせてもらう」と言いだしたのには驚いた。
エッこの劇団から寺山さんが消える?
私は単純に、そんなことはあり得ないと思っていたのだが、
「それもやむなし」と考える団員が半数近くいたのにはもっと驚いた。
主宰者が消えても劇団は存続させ得るという団員たちの自負の現れであり、
天井桟敷のスタッフの層の厚さを垣間見る思いだった。
結局総合演出担当の幻一馬が、責任をとって退団という何かあっけない結末に落ち着いた。

その後私は、寺山さんの間近で演出助手や共同演出、助監督、俳優として長く関わることになるのだが、
今でもあのときの寺山さんの決断が正しかったのかどうか私は判断できないでいる。

「答えのない質問」。

ただこの市街劇、寺山修司との出会いが、私をさらなる演劇の地平へと導いている事だけは間違いない。

                                      元・演劇実験室天井桟敷 根本豊
Comment
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL :
comment :
password :
secret : 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright (C) 旅の途中−ブログ篇− all rights reserved.
designed by polepole...