旅の途中−ブログ篇−
                  「根本豊の Beyond The Radio」
旅の途中   万有引力物語(3)
2001年 02月 01日 (木) 18:56 | 編集
 さていよいよ旗揚げ公演である。
演劇実験室◎万有引力結成後、僅か二ヶ月足らずで上演された「シナの皇帝」(原作・G・リブモン・デセーニュ、文芸坐ル・ピリエ)は、
演劇実験室◎天井桟敷解散直後だっただけに注目された。

存続するのは困難」「寺山の存在と新作を欠いたまま、どのような新展開が可能か?」といった声の中で上演された「シナの皇帝」は、
手前味噌ながら、そう言った不安を吹き消す、素晴らしい作品に仕上がった。

我々のせっぱ詰まった状況が火事場のくそ力的パワーを生み出したのかも。
というのは、アトリエ工事と並行の練習で(実は工事はまだまだ続いていた)、その工事も専門的な知識も必要なことから、
資材人件費込み百万弱の前払いで、ある業者に頼んだのだが、その業者がある日、資材を残したまま忽然と姿を消したのである(いわゆるトンズラ)。
残された資材を前に我々は立ち竦むばかり。ま、お金の持ち逃げと言っても資材だけは残ったのだから、不幸中の幸い。我々は見よう見まねで防音工事から再開した。

工事の合間を縫っての練習か、はたまたその逆か判然としないまま、
我々は意地だけで旗揚げまでこぎ着け、八三年十月二〇日午後七時、
初日の幕は開いた。

観客で来ていた詩人・作家のA・ジュフロワもおもわず『ジェニアル!(すごい!)』と叫ぶほどの興奮。一同してやったりの面もちで、終演後は浴びるほどの美酒…、のはずだったが、
来し方にそれぞれが思いを馳せ、ちょっぴりほろ苦いその夜の酒であった。 (続く)
 根本 豊
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